LOVE*PANIC




「丁寧な挨拶なんていいよ」


笑う竣平に頭を下げながら、一歌はグラスを受け取った。


おそらく、親しい人のいない自分に気を遣って来てくれたのだろう。


そう思うと、少しの申し訳ない気分になった。


「あまり構ってあげられないけど、ゆっくりしてね」


竣平の言葉に、一歌は笑顔で頷いた。


打ち上げはライブスタッフのもの。


竣平は以前からそう言っていた。


なので、後輩一人に構っているわけにもいかないのだ。


一歌は勿論、それは理解しているし、何より、その竣平の気配りを尊敬していた。



スタッフがいてこそ、最高のライブが作れる。


その理屈は理解しているが、それを実感したことはなかった。


ライブ経験がないわけではない。


スタッフがいい加減なわけでもない。


むしろ、いつも一生懸命に空間を作ってくれる。


だが一歌は「最高」のライブというのを味わったことがないのだ。


一歌は一人でゆっくりとアルコールを口に運びながらライブハウス内を観察した。


有名モデルもいれば、タレントや、ドラマのプロデューサーなんかまでいる。


全員、一歌と同じ職場といっても過言ではないほどだ。


皆、同じ世界にいる人。


こんな中にいたら、自分のようなちっぽけな存在は埋もれてしまって当然かもしれない。


一歌はグラスの中身を飲み干しながらそんなことを思った。


気を紛らわす為にアルコールを流し込む。



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