LOVE*PANIC



そのドラマの主題歌、挿入歌さえも、ヒット曲にしてしまうのが、井口誠という敏腕プロデューサーだ。


井口は、修二主演のドラマも幾つか手掛けている。


一歌は井口が目の前にいることよりも、竣平にこれ程までの知り合いがいることに感心した。


「また、一緒にドラマをやるんだ」


修二はちらりと井口の顔を見て言う。


だから何なのか、一歌にはさっぱり分からなかった。


そんな一歌の様子に、修二はにやりと笑ってから、口を開いた。


「井口さん、どうかな? 次のドラマの主題歌に、この子」


修二の言葉に、一歌の頭の中には大量のクエスチョンマークが飛び交う。


「いいんじゃない? まだ、内定してないし、修二君がいいっていう歌手は当たるし」


井口は軽いノリでそう返した。


「簡単に決定にはならないけど、君の歌を聴いてから、正式に事務所にオファーしたいんで、事務所だけ教えてくれるかな?」


井口はそう言いながら、名刺を一歌の前に差し出した。


一歌は早すぎる展開についていけず、口をぽかん、と開けたまま、返事も出来ずにいた。


「事務所は、竣平君と一緒だって」


代わりに答えたのは修二だった。


「オーケー。じゃ、近いうちに」


井口は笑顔で言い、その場を去っていった。


井口が余程、一歌の歌を駄目だと判断しない限りは、この話は進むだろう。


一歌は自分の身に何が起きているのか理解出来ずに、放心状態となった。


まさか、そんなに上手くいくわけがない。


有り得ない。


二人して自分をからかっているのだ。


そんな考えしか浮かんでこない。


一歌は現実を整理することもままならない状態で、修二の顔を見た。



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