LOVE*PANIC
「着いた」
修二は車を停めると、うーん、と伸びをした。
「さ、降りて降りて」
一歌は修二に背中を押されて車を出た。
すると、目の前には海が広がっていた。
海の向こうに見えるビルの灯りが煌めいていて、幻想的な世界にも見える。
「う……わあ」
一歌が感嘆の声を上げた瞬間、柔らかい風が吹いた。
気付かない間に大分遠くまで連れてこられていたみたいだが、この景色を目にしたら、何の文句も出てこなかった。
「ああ、腹減った」
修二は大きい声で叫びながら、コンビニの袋を漁り始めた。
人が少ないせいか、一歌は周りの目は大して気にならなかった。
「ほい」
がさがさとやっている修二を一歌が眺めていると、修二は一歌に向かって何かを投げてきた。
一歌は条件反射で何か分からないまま、それを見事にキャッチした。
一歌は胸に抱えたそれが何かを確認すると、明太子のオニギリだった。
「……ここで食べるんですか?」
一歌がそう訊くのが遅いのか、修二は既にオニギリにかぶりついていた。
「え? 何で?」
しかも、一歌の質問を不思議そうな顔で受け止めた。
「外で食べるの、嫌な人?」
早々とオニギリを食べ終えた修二に訊かれ、一歌は首を横に振った。
「嫌じゃないですけど、何か意外だなあ、と……」
修二は言わずと知れた、大物俳優だ。
なので、こんなふうに外で、しかもコンビニの物を食べる、というイメージはない。
今、こうしてオニギリを食べている修二は、テレビの中の浅田修二と同じ人物には見えない。
「意外?」
修二は二つ目のオニギリの袋を破りながら首を傾げた。