LOVE*PANIC
暗がりのせいか、その仕草は年齢よりうんと若く、可愛く見え、一歌は少し戸惑った。
「何ていうか、綺麗でお洒落な店で、高いワイン飲んでるイメージです」
一歌は戸惑いを隠すように、オニギリに視線を落とした。
オニギリの包みに貼られたシールの「明太子」という文字を見つめる一歌の耳に、修二の笑い声が届いた。
一歌はそれに驚き、思わず顔を上げた。
すると、目の前では、何故か修二が爆笑している。
「成る程ね」
修二は必死に笑いを堪えながら、口を開いた。
「世間的に見たら、俺ってそんなイメージなんだ」
修二は苦しそうに腹を押さえている。
「……はい」
世間的にも間違いなくそうだろうし、一歌の中の修二のイメージもそうだ。
「まさか。俺だって普通の人間だし」
修二の言葉に、一歌は手にしていたオニギリを落としそうになった。
「あ……あはは、そう……ですよね」
一歌はオニギリを持つ手に力を入れた。
何を考えていたのだろう。
そうだ、修二だって、生まれた時から、今の修二だったわけではないのだ。
デビューするまでは、普通の生活をしていたのだろう。
一歌は、修二を違う世界の人だと思っていた。
勿論、自分だって芸能界にいる。
だが、成功している者とそうでない者は違うのだ、と思っていたのだ。
「当たり前じゃん。すげー普通の人だよ」
修二は一歌の狼狽えに気付くことなく、オニギリを頬張った。
「……」
一歌はオニギリを持つ力を緩め、修二に近付いた。
それでも、十分に強い力だ。
「潰れるよ?」
修二はそんな一歌の手元を見ながら、残念そうな声を出した。