ハッピーエンド
上品な感じの中年女がその場に泣き崩れた。
女に小山内と呼ばれたもう一人の女も座り込み頭を床にこすりつける。

「先生!私の家内もA型だ、すぐに連れてくるから坊ちゃんに輸血を・・・」

男が白衣を掴んだ手にさらに力を込めた。

「あなた達は?・・・警察から何も聞いてないんですか?」

医師は掴みかかる男を煙たそうに避けながら原田を見た。医師より一つ年上の看護士は黙って首を振る。

「わたし達は旦那様に仕える者です、坊ちゃんの身にもしもの事があれば・・・あの優しい坊ちゃんに」

「司さんは亡くなりました。残念ですが此処に運び込まれたのは息を引き取った後です。聞いてませんか?」
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