月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「勝手ばかりしよってからに。
当然じゃ!」
「なにを言う。
彼はいつも民のために動いているではありませんか。」
「楊太僕なら、王宮でも仕えられる。
それを敢えてしないことの意味がわからんか!」
「そうはいっても、非礼極まりないことも多い。」
「主上の即位式も欠席したしな。」
ああそうか、と礼は思い出した。
即位式に顔も出さなかった男。
先ほど、朱雀から楊震については聞いていた。
民のために、齢七十で国中を駆けずり回っているという。
近年は、子州で立て直しを行っていた。
楊震はきれい事を並べるだけではなく、自らが先頭に立ち、行動を起こす。
そして、鮮やかな結果を残していた。
その功績を讃えて、王たちも彼の言動にある程度目を瞑ってきた。
当然、高官たちには面白くないと思うものもいる。
寵愛を受けているようなものなのだ。
明道は、後ろで飛ばし合っているヤジなど、耳に届いていないかのような顔をしている。
明道の目は、しっかりと礼を見ていた。