穢れなき獣の涙
 しかし、警戒することもなく近づいてくる人間に怪訝な表情を浮かべて見つめていると、ヤオーツェはそれが見知った相手だと気がつく。

「あ。確か、集落に来てた」

「シレアだ。彼女は?」

「ケジャナル」

 この状況で言い訳しても仕方が無いと諦めて、ガビアリアンを紹介した。

 ケジャナルは近寄るシレアを睨みつけ、収めた剣の柄から手を離さない。

「何をスる!?」

 目の前でしゃがみ込んだ人間にビクリと体を強ばらせた。

「何もしない」

 手を伸ばし、ゆっくりと巻かれている布を外していく。

 その痛々しい傷にシレアは眉を寄せた。

「何にやられた」

 傷口が瘴気で火傷のようにただれいる。

 この傷には見覚えがある。

「バシラオダ」

「……バシラオ」

 やはりかと表情を苦くした。
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