穢れなき獣の涙
 彼らはマナの濃いウェサシスカで生まれ育っているため、大気が薄いのと同等に多少の息苦しさを感じているようだ。

 翼は羽毛によって温かいが、体はその寒さに着込んでいる。

 このなかで気温に振り回されそうにないのはアレサくらいだろうか。

 よく言えば気温の変化に強く、悪く言えば鈍い。

「なんでこんな所に住んでるんだよ!」

「特別な大地には特別なことがある。そういうことなんじゃろう」

 声を張り上げるヤオーツェをなだめるように発した。

「ミシヒシが動かないよ~」

 しかしヤオーツェはスワンプドラゴンの首をさすりながら、か細い声を上げる。彼自身も寒さで動きにくそうだ。

 後ろに乗っていたシレアは口の中で何かをつぶやき、そっとミシヒシの背に手を当てた。

 すると、縮こまって動かなかったスワンプドラゴンが徐々にその体を動かし始める。

「えっ? なにしたの?」

「周囲に暖かな空気を集めた」
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