穢れなき獣の涙
 相変わらず、どこからか注がれる視線──敵意は感じないものの、あまり気持ちの良いものではない。

 視線は遠く、おそらく別の場所から意識を飛ばしてこちらを窺っているのだろう。

「まあいいさ」

 仕掛けるつもりならとっくにやっているだろう。

 気にせず多めに薪をくべ、眠りに就いた。





 ──朝、鳥の声を聞きながら出発の準備を始める。

 魔物の棲む森と言われているが、実際には澄んだ大気が流れる場所だと感じた。

 森に入ってから、まだ一度もモンスターや邪悪な存在には遭遇していない。

「ここは聖なる領域なのか」

 森の全域がそうでないにしても、そんな聖地が何故、魔物の棲む森などと言われるようになったのか不思議に思いながらもカルクカンにまたがる。
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