冷め切ったコーヒーに写った自分の顔。
俺は目を強く抑え、彼女をしっかりと見つめた


「かならず幸せになって」


その真剣な目を、彼女はどう思ってくれたんだろう?

ただ涙を抑えるのに必死な顔をしていたと思ったのかな?



「アイツの乗った電車が見えなくなってから…
俺は思ったんだ
もう誰も傷つけたりしたくないから、
アイツのような辛い思いをさせたくないから…
どんなことがあっても、あいつの幸せだけを願うって」

「じゃー、諦めるって…こと?」

「…諦めたつもりではいるけど…
あれから誰にも恋をできないのは…
諦めてない証拠かな?」

そう言いながら少し笑って、彼女をみると…真剣な目で俺を見ていた。

俺は笑うのを辞めてまた話を続けた


「どんなに可愛い女も、エロくてセクシーな女も、タイプの女も…
アイツを超えるなんて無理なんだよ。
いっつも比べてしまうんだ…。
アイツが一番だって…。」

「…その彼女は今どーしてるの?」


「………今………」


俺はその質問になんの言葉も返せなくて、
ただ彼女を見つめた




―トコトコ…

遠くから少しずつ近づく足音が俺の背後で止まった


「ハチ…ごめんな。 ちょっと急用で。」

「そっか。」



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