後ろに立つ男を見て、彼女は心配そうな顔をして言う。

「カズ?…仕事の電話でしょ?」

そう、俺の後ろに立ったのはカズ
高校の時の友達の…
俺からルナを奪っていったカズ


「そうだけど…なんで?」
俺を置いて二人は会話を始めた。

「ごめんね…もう戻っていいよ!大丈夫だから…家まで帰れるし。」

無理に笑う顔が、俺にはすぐにわかった。
でも、カズもわかっていたのかすぐに俺に言ってきた。

「…ハチ、こいつ送っていってやって!」

俺は背筋を伸ばし驚いた

「…え?」

「頼む!俺、会社戻らないと…お前直帰するんだろ?」

そう言いながら俺の前で手を合わせてる。

「あ~、いいよ。女の人を一人で帰らせるのは失礼だしな。」

「ありがと。頼む!じゃっ、ハチに送ってもらえよ!」

それだけ言うと、カズは人ごみで溢れる場所へと姿を消した。


この席から見える人ごみは、俺の心のなかのモヤモヤ感を映し出しているようだ。

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