「記憶がないからって…甘えてんじゃないよ!」



「うっせー!お前に何がわかる? 
お前のこと分かっても、俺のことわかんねーんだぞ?
お前にその気持ちがわかるか?」

むなぐらを掴んでいた手をとり、
そう叫び、サオリの手を投げるように離した




―バシッ。



「…いっってー。お前、女だからって調子のって」

「バカ!バカバカバカ!!」

サオリはまた俺のむなぐらを掴んできた


でも今度は力が弱い



「記憶がなくたって…ハチには流れてるんやろ?」


「は?」


「ルナとすごした18年間、覚えてるんでしょ?
だったら、それだけでもいいやん…全くないんじゃないだから…
ハチに流れる記憶だけで十分じゃんか!」


そのまま俺の胸のなかでサオリは泣いてる。


「・・・でも、それじゃー意味ないんだって」


小さな声で、俺がそう言ってもサオリは何も言ってこない


ただ、涙を流してるだけ





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