鳴神の娘

(神よ・・・いるなら手を貸してくれ)

あなたの娘を守ってみせるから。


祈ったつもりはなかった。

しかし、思いは天に届いたらしい。

空が光った。


「うわあああああっ!?」

「退けーーー!」


耳が壊れたかと思った。

それほどまでに激しい落雷だった。

敵軍の本陣を中心に落ちた雷は、味方の軍にはかすりもしなかった。


「陛下! ご無事ですか!」

「ああ・・・」

「不思議なこともあるものです・・・どうやらあちらの大将は黒焦げらしいですな」

「小隊長。殿ご苦労だった」


不思議なこと、だと?

気づけば、腕の中の娘は気絶していた。

敵軍は散り散りに敗走し、この戦いの勝利を喜ぶ声が上がった。

もちろん、こちらの軍から。


「鳴神・・・・約束は、必ず」


娘を起こさぬよう、そっと天幕へ戻った。


< 8 / 17 >

この作品をシェア

pagetop