鳴神の娘
第2章庇護者
気づいたら、ふわふわの毛皮の上で横になっていた。
・・・・・何の毛皮だろう。
周りは厚めの布で囲まれている。
床にも同じ布が敷かれている。仕切りも同じ布だ。
テントのようだと思った。
テントの中には私以外誰も居ないみたいだ。
仕切りの外から声がする。
そっと向こう側をのぞけば、たくさんの人が紙を見ながら話し合っていた。
「では、国境はそのままで?」
「ああ、下手に動かせば後々面倒だ。それよりも賠償金を・・・」
聞き覚えのある声がよどみなく喋っている。
後姿しか見えないけど、私を馬上に引き上げた人だ。
長い黒髪を後ろで一つに束ねた長身は、後姿だけで惚れ惚れするほどだ。
「陛下、鳴神の姫が・・・」
「!」
みんなが一斉に振り向いたから、さっと仕切りの布に隠れた。
なんでこっち見るの?
足音が一人分、近づいてくる。
「・・・・姫」
姫? 姫って誰!?
「どうしました」
「はい!?」
私か!
呆然としていると、あの人がもっと近くに寄ってきた。