世界が終わる前に
最初こそ抵抗しながら歩いていた彼も諦めたのか、もうすっかり私にされるがままだった。
途中、繁華街にある中型の薬局に寄って、近くの公園に移動しても彼は無抵抗に黙ったままだった。
「……座って下さい」
言いながら園内の片隅にあるベンチを指差すとやっぱり彼は、大人しく私の言う通りそこに座ってくれた。
ポケットに両手を突っ込んだままドサッと音を立てて、大きく足を広げ右足の踝(くるぶし)を左膝に引っ掛けて座った彼を横目に、私はガサガサとレジ袋をまさぐり、さっき薬局で買ってきた消毒液とコットンを取り出した。
コットンに消毒液を染み込ませると、エタノールの匂いが鼻をつんと刺激した。
それから素早く彼の真ん前に移動した私は、それをゆっくりとその痛々しい傷口に当て行った。
「……っ、」
途端に端正なその顔を微かに歪めた彼が、不謹慎にも可愛いと思えてしまった。
クールな雰囲気とは裏腹の、無防備な彼の表情にまた鼓動が高鳴った。