彼岸と此岸の狭間にて
「ごめんください!」              
木製のガラス戸を開ける。


奥の方で男性の声がしたかと思ったら、『ドカドカ』という足音が聞こえてきた。                       
「何か?」                   
表れたのは60歳代の金渕眼鏡を掛けた顔中染みだらけの人物であった。               
「少しお尋ねしたい事が?」

「はい?」                   
「あの賽銭箱にある『土門重吉郎』という人の事についてなんですが?」               
「あ〜っ、土門さんの御先祖様ね!?」                  
「『寄贈』ってなっているんですが、その辺の経緯とか教えて欲しいと思いまして…」                                 

「葵、何やっているんだよ!!」

赤沢も遅れて来る。               
「おやっ、お友達!?」             
神主に気付き、赤沢は軽く会釈する。                               
「土門さんと君たち何か関係があるの?」                    
「いえ。『香澄さん』とは小中と同級生なので、その『香澄さん』と関係があるのかと素朴に思っただけでして…」                    
説明としては不十分だとは葵にも分かっていた。              
「あはははっ、言っている事は理に適っていないけど何にでも興味を持つ事は良い事だよ。ちょっと待ってて調べてみるから…」              

神主は奥の宝物部屋の方に向かって行ったようだ。                         
「急にどうしたんだよ?」            
賽銭箱にある『土門』の名前について話す。                
「『恋は盲目』と言うけれどそこまで香澄に惚れていたのか!?」

「いや、そういう訳では…」

「いいからいいから、照れるなって…」
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