彼岸と此岸の狭間にて
10分程して神主が戻って来る。                     
「お待たせ」                  
手には薄汚れた染みだらけ茶色の冊子を持っていた。              
「載ってるには載っているんだけど、少ししか載ってないなあ…ほらっ!」              
そこには『みみず』がのたうち回ったような文字が載っていて葵達には読めなかった。                     
「これ、なんて書いてあるんですか?」                  
「うん、享保10年、土門重吉郎殿より『金300両』贈与される、って…」             
「享保10年っていつ頃ですか?」                    
「はっきり分からないけど1740年頃じゃないかな!?」

「土門重吉郎というのは今の『土門グループ』の開祖になる人ですか?」               
「実際に、今の『土門グループ』の礎を作ったのは明治時代の幸二郎さんの時と聞いているけど…」

「『300両』というとかなりの大金ですよね。何をやっていた人なんでしょうか?」

「それは私にも分からないけど『苗字』があるから農民や商人ではないよね!?」                       
「どうしてですか?」              
「だって江戸時代は『苗字』が許されたのは武士とか公家だから…」                 
「という事は武士ですか?」

「可能性は高いよね…詳しく知りたいのなら土門家の人に直接聞くか、ほら、駅の反対側に『菩提寺』ってお寺があるじゃない?」             
「俺、知ってるぞ、葵!」            
「その『菩提寺』が土門家の主寺だから行って聞いてみたら!?」                  
(そうか、そうだよ、お寺だよ。死んだらそこに葬られるわけだから…何故、気付かなかったんだろう!?バカだな、俺は!!)
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