彼岸と此岸の狭間にて
「うん。ただ同姓同名ということもあるから『絶対』だとは言い切れないんだけど…」
「そうですよね!?」
「それでね、この『巻き物』は君が持っているべきだと思うんだ」
「えっ、僕がですか?だってこれは大事なお父さんの…」
「いや。だって、ここに君の名前があるけど僕達の名前はない。
それに君がこの店を訪れ、父に会って『日本刀』を手に入れ、そして今日、この『巻き物』に出会うというのは『偶然』とは考えられないじゃないか!?」
「……」
「だからさ、君が持っているべきなの。それでどうするかは君が決めればいいんじゃないか!?家系図について調べるもいいだろう。あるいは押し入れに放り込んでおいても構わないし…ねっ!?」
「はあ……」
どうしようか迷って巻き物を見ていると、一番後ろの方に何か書いてある。
「これは?」
「あ〜っ、それね、父が書いたものだけど、何の事かさっぱり分からない」
葵も読んでみる。
『彼岸と此岸の狭間に身をゆだねその存在意義を見い出せば自ずと道は開かれん 長谷部徳蔵』
(確かに何の事やら分からない)
葵はそれからも説得され続け、結果、巻き物を譲り受ける事にした。
長谷部家の人達に挨拶をして家を出る。葵は振り返ると今一度合掌をする。