彼岸と此岸の狭間にて
「そうですかあ!?なんか悪いような…」                 
「お気に召すな。天下太平の世、早急に本刀が必要となる事態にはなりますまい。『明日は明日の風が吹く』で御座るよ」                 
(良い人だなあ、山中さんは…)                     
「さて、急いで帰りましょう!今日、拙者の妹が上京する事になっておるんですよ」                    
「山中さんにも妹さんが…!?」

「『雪之』と言います。歳は10程離れていますが、綺麗ですよ。綾野さんにも引けを取らないくらい、ははははっ…」                  
「どちらから?」                
「上州(群馬県)です」             
(上州ってどこだろう?)            
「紫馬殿は出身地はどちらで?」                  
(出身地かあ…どうしよう!?)                     
「ここより西の…」               
「甲州…?」                  
(甲州は知っているぞ。『甲州ぶどう』だから…山梨、そう山梨県だ!)               
「いえ、そこまで行かずに、もうちょっと手前の…」            
「もうちょっと手前で御座るか!?そうなると武蔵国辺りですかな!?」               
(武蔵国!?あの辺の駅名に武蔵境、武蔵小金井ってのがあるから、多分そうなんだろう!?)                 
「そうです、武蔵国です」            
「左様か。あの辺は何もない所と聞きますが…」              
(今でも何もないから300年前は当然何もないよな!)                      
「山と畑だけです。ところで私は山中殿とはどういう風に顔見知りに?」               
「お忘れか?まあ、それも仕方ないで御座るかのう!今日で会うのが二度目ですから…」                    
(えーーっ、今まで1度しか会ってないの!)?
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