彼岸と此岸の狭間にて
「では、その1度目はどこで?」
「新宿の『口入れ屋』(職業斡旋所みたいなもの)で御座る」
(う〜ん、また分からない言葉が出てきた。口入れ屋?何屋さんなんだろう?でも、新宿って言ったよな!?)
「そうですか?因みにこの辺りは?」
「品川界隈で御座る」
「品川…ですか?あと、もう1つ」
「何で御座る?」
「私の長屋はどこに?」
「今日はずーっと変で御座るな!?まるで初めて江戸に来たような物の言い様をする」
「どうも済みません…」
「別に謝る程の事では…紫馬殿は目黒で、拙者は原宿」
「目黒ですか?」
(目黒は小学二年まで住んでいたので何とか分かるが、原宿には一回ぐらいしか行った事がないぞ…)
日は落ち、辺りはすっかり薄暗くなった。人通りの多い所なら人家の灯や提灯の明かりでまだましだが、大通りを一歩離れてしまえば暗さは倍増した。
(今、何時ぐらいかな?本当に時間が分からないのはもどかしい…)
「山中殿!?」
「はい?」
「お恥ずかしい話なのですが、帰り道が分かりません」
「はははっ、いかにも紫馬殿らしい!ご心配めさるな、拙者がしっかりと送り届けます故…」
「何から何までありがとうございます」
どこ吹く風に道端の草木も揺れ、空には無数の星が瞬き出していた。こうして葵の奇妙な経験の1日目が終わろうとしていた。
「新宿の『口入れ屋』(職業斡旋所みたいなもの)で御座る」
(う〜ん、また分からない言葉が出てきた。口入れ屋?何屋さんなんだろう?でも、新宿って言ったよな!?)
「そうですか?因みにこの辺りは?」
「品川界隈で御座る」
「品川…ですか?あと、もう1つ」
「何で御座る?」
「私の長屋はどこに?」
「今日はずーっと変で御座るな!?まるで初めて江戸に来たような物の言い様をする」
「どうも済みません…」
「別に謝る程の事では…紫馬殿は目黒で、拙者は原宿」
「目黒ですか?」
(目黒は小学二年まで住んでいたので何とか分かるが、原宿には一回ぐらいしか行った事がないぞ…)
日は落ち、辺りはすっかり薄暗くなった。人通りの多い所なら人家の灯や提灯の明かりでまだましだが、大通りを一歩離れてしまえば暗さは倍増した。
(今、何時ぐらいかな?本当に時間が分からないのはもどかしい…)
「山中殿!?」
「はい?」
「お恥ずかしい話なのですが、帰り道が分かりません」
「はははっ、いかにも紫馬殿らしい!ご心配めさるな、拙者がしっかりと送り届けます故…」
「何から何までありがとうございます」
どこ吹く風に道端の草木も揺れ、空には無数の星が瞬き出していた。こうして葵の奇妙な経験の1日目が終わろうとしていた。