彼岸と此岸の狭間にて
改札口に傘を持つ祖母の姿を見つける。                      
「おばあ〜ちゃん!!」             
カバンひとつの身軽な美優は手を振りながら駆け出して行く。両手を塞がれている葵はそうはいかない。                         
美優と祖母は手を取り合って喜んでいる。                 
(お前らは友達か!?)                         


自動改札機を抜ける。              
「葵もよく来たね!」              
「お久しぶりです」                
グレーのチリチリした髪にふくらっとした顔立ち。にこやかな表情をした少し太めの祖母が立っていた。

「じゃあ、お祖父さんが待っているから行こうか!?」                       
祖母は葵の荷物を1つ持つと美優と並んで外で待つ祖父の元へ歩き出す。                                       

駅前は小さなロータリーになっていて雨の中、バスが一台と客待ちをしているタクシーが3台停まっていた。                       
駅前というのに人影は疎(まば)らで、近くのファーストフードの店の中の子供連れの母子の姿が目についただけであった。                                
祖父の白いファミリーカーはすぐに分かった。               
「お祖父ちゃん、今日は」            
「おう、葵も美優もよく来た。荷物は後ろのトランクに入れて…」                  
祖父は祖母とは逆でほっそりとしている。『ギョロッ』とした目は印象的である。                        

荷物を収納し終えて葵が助手席に、美優が後部座席に祖母と伴に乗り込む。              
「じゃあ、行こうか!?」                        
祖父母の家はここから更に車で20分程の携帯電話の電波も届かない所にあった。
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