彼岸と此岸の狭間にて

「このお二方とは三日前に四ツ谷の『口入れ屋』で知り合ったので御座るが……仕事を世話してもらう事になって必要な人数はあと二人という事で葵殿を推薦しておいたのですよ」                 
「はあ!?」                  
「ところが、つい先程、『菱山』殿のお知り合いの『長谷部一徳』という御方がどうしても金が必要で『是非とも』と言うので、その方に決まってしまったので御座る」                 
「なあんだ、そんな事でしたか!?良いですよ、別に。私はお金に困っているわけではないですし…それでその人が助かれば何よりじゃないですか!?」               
「左様か!?かたじけない。ここまで呼んでおいた手前、如何いたしたらよいかと…本当に面目ない!」             

「良いんですって。頭を上げて下さい」                  
「本当に申し訳ない……どんどん飲みましょう!土門殿も菱山殿も、遠慮なさらずに!お姉さん、お酒、お酒!!」                

上機嫌な山中に、無口な二人。そして下戸の葵。『盛り上がれ』っと言っても盛り上がりようがない。                

結局は山中が一人で盛り上がって早いお開きとなる。                                                                                    

「愉快ですなあ、葵殿!こんなに楽しい事は久しぶりで御座るよ……そうだ!葵殿、今日は是非拙宅に寄られよ。それが良い、それが良い」                     
「あの〜っ、山中殿。仕事は何を?」                  
「うむ、これは絶対内密で御座るよ」                   
「はい」                    
葵に屈め、屈めと合図をしている。                                   
「名前は明かせぬが、幕府の要人の身辺警護で御座る」

「本当ですか?」                
「うむ」
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