彼岸と此岸の狭間にて
「いか程になるのですか?」           
「三ヶ月で30両(1両、約10万円)!今日、支度金に1両頂戴つかまった」            
「30両!!!」                
(俺が1日働いて4分[約6千円]。凄過ぎるぞ!大丈夫かな!?話が旨過ぎないか!?)                   
「これで妻を長崎の名医に診てもらえるし、雪之の結婚の支度金も出来た!」              
(こんなに喜んでいるのに水を差すのもなあ!?)             
「山中殿、旨い話には裏があると申しますから…」             
「心配御無用!この要人は本物。そのお人が騙すはずがない!」

「そうだとしても一応用心した方が…」                  
「大丈夫ですって…でも、葵殿がそこまで心配してくださるなら一応用心はしますかな、がははははっ!」            

(ダメだ!!酔っている上にお金にすっかり魅了されている)                                
「それで肝心な仕事ですが、いつからですか?」              
「それが重要任務の為、当日、幕府の方から使者が来る事になっておっていつからかは今のところは分からないので御座る」                
「土門殿と菱山殿は?」             
「勿論、一緒に仕事をするで御座るよ」                  
「そうですか!?」               
(言い出しっぺが参加しないのなら怪しいが、あの二人もやるというなら大丈夫か!?)                                
どこをどう歩いて来たかは分からなかったが、原宿界隈に入っていた。              

「ここ、ここ、ここで御座る」                      
葵が目にした物は今にも押し潰されそうな傾いた長屋である。                    
(これはヒドイ!!)              
山中は路地に入って3軒目の家の立て付けの悪そうな戸を開ける。
< 53 / 207 >

この作品をシェア

pagetop