オパール・オッドアイ
人の波を逆走する三人を微笑ましげにニコニコと見送る御老人と擦れ違った。
恐らく祭りではしゃいでいると思われたが当の本人達はかなり必死の形相。

「どうしよう!雪お兄ちゃん怒ってるかも!てか死んじゃう!」

「それは無いから落ち着いて、姉ちゃん。でも瑠璃さんから説教はあるかも。」

「嫌~っ!!」

「あと、うさぎ。
俺達は雪夜兄さんから説教と銘打った憂さ晴らしが待っていると思う。
気をしっかり持て。
精神攻撃、半端ないから。」

「うわぁ…。
でも容易に想像できるな。」

「とにかくバスに間に合わないと!
次、一時間後~!」

さらにスピードアップして走ると既にバス停に停車していたバスの扉がしまろうとしているのが見えた。

「待ってください!」

辛うじてバスに飛び乗れた三人は空いていた一番後ろの席にぐったりと腰掛け到着するまで死んだように寝ていた。
到着しても誰も起きなかったものの、バス停まで迎えに来ていたるーちゃんに文字通り叩き起こされ無事に帰宅。

それから30分ほど正座で説教を聞いた後、痺れる足を摩りつつ料理を作りはじめた。
(料理を作っている間もうさぎと琥珀は雪お兄ちゃんから説教?されていて、それは料理が完成して呼ばれるまで続いた。)
食事が終わった頃には10時を過ぎていて、皆疲れたり体調が優れなかったりしていたので順番にお風呂に入って寝ることになり、私は部屋に戻る前に雪お兄ちゃんの部屋に立ち寄る。

「雪お兄ちゃん起きてる?」

中を覗くとスヤスヤと眠る雪お兄ちゃんが見えた。
今日の事を謝ろうと思っていたけど寝ているなら明日にしようと引き返そうとしたとき雪お兄ちゃんの唸り声が聞こえて慌てて部屋の中に入る。
「雪お兄ちゃん!どうしたの!?どっか苦しい?痛い?」
「…ん。」
揺すり起こすとうっすらと目を開けた雪お兄ちゃんを観てほっとしたのもつかの間腕を捕まれ布団の中に引き込まれ抱きまくら状態になる。
びっくりして離れようと試みたもののびくともしないし疲れたのでそのまま就寝。
その夜の夢で輝く夜のお祭りで大輪の花火が打ち上がる中、幼い私は顔の見えない誰かとキスをしていた。

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