『霊魔伝』其の弐 火の章
宿舎に行くと、部屋がすでに用意されていた。
部屋にはいると小太郎は笑いながら言った。

《ハハハ。どうした零次朗。彩花に似ていて驚いたか。》

「ああ、何故彩花がここにいるのかと思ったら、頭の中が真っ白になった。まさか彩花ではないだろうけど。」

《当たり前だ。ここに彩花が来るわけはない。あれは霊魔の中でも、特に悪戯好きな奴だ。零次朗の心を覗いて、一番強く思っている存在をコピーしたんだよ。

注意しろと言っただろう。ここではすべてが修行だと思え。もし、悪意を持つ霊魔だったら、零次朗の魂は飲み込まれていたぞ。
あいつは、零次朗の心の隙を見つけ、注意を促してくれたのだ。》

「小太郎は最初からわかっていたのか。」

《もちろんだ。修行だと思うから黙っていたんだ。悪く思うな。》

「そうか、もっと気を引き締めないといけないんだな。」

《少し休もう。その後、闘技場に行ってみようか。下見もかねて。》

どれぐらい寝たのか、零次朗はほっとした途端に眠り込んでいた。

《零次朗、起きろ。村長が戻ってきたみたいだ。今連絡が来た。コンテストが中止になったらしい。トラブルが起きたと言っているが、事情がわからない。》

零次朗が目を開けると、部屋の入り口に霊魔が立っていた。

ひと眠りして落ち着いたせいか、その霊魔が村長の家で、彩花になった霊魔だとわかった。同じ波動を持っていることに気がついたのだ。

零次朗は、声をかけた。

「さっきは驚かしてくれたな。でも、良い勉強になった。で、君の名前は。」

《零次朗、良い心持っています。さすが、佐緒里の息子。私の名は、イシャナエイ。》

「イシャナエイ。今のその姿が本当の姿なのか。君は俺のかあさんを知っているのか。」

《知っています。佐緒里はここでは有名。人間とは思えないぐらい能力が高かった。零次朗のことも、知っています。佐緒里のお腹にいるときに、会っているから。》

「そうか、生まれてはいないけど、俺は一度ここに来ていたんだな、かあさんと一緒に。そういうことだろう、小太郎。」
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