『霊魔伝』其の弐 火の章
《待て、これを持っていけ。》
村長は懐から小さな鏡を出した。

《これは、真実を映す鏡。奴がどんなものに化けても、この鏡が暴いてくれよう。》
ドハンバは鏡を受け取ると、走りだした。


零次朗たちは、門の手前に来ていた。門は固く閉ざされており、静寂が漂っていた。

「インドラ、ガルダヤ。零次朗だ。この門を開けてくれ。」
大声で叫んだが、返事がない。

《零次朗、様子がおかしい。気を付けろ。嫌な波動を感じる。奴が近くにいるぞ。バラダハン、周囲に気を配れ。》

すると、門が軋みながら開き、中からインドラが倒れ出てきた。
零次朗は駆け寄ると、声をかけた。

「インドラ、どうしたんだ。しっかりしろよ。ガルダヤは何処だ。」

《ガルダヤは、奴に飲み込まれた。奴は零次朗を狙っている。誰も信じるな。自分の心を信じるのだ。》

振り絞って最後の言葉を言うと、インドラは蒸発するように消えた。

「インドラ・・・。小太郎、俺はどうしたらいいんだ。」

《門を閉めるのだ。奴をここから外に出しては駄目だ。》

「バラダハン、手伝ってくれ。門を閉めるぞ。」

零次朗は、門を閉めようとするがビクともしない。
バラダハンが手伝っても、動く気配すらない。

「何故閉まらない。」
零次朗が呟いたとき、ドハンバが追いついた。

《零次朗殿、どうした。バラダハン何があったんだ。》

ドハンバが異常を感じて叫んだ。バラダハンがそれに答えた。

《ドハンバ、奴が近くにいる。この門を閉じるのだ。手伝え。》

ドハンバが手伝うと、門が動きはじめ、大きな音を立てて門が閉まった。

《これで奴は、外には出られない。零次朗を狙っているらしいから、零次朗がここにいる限り、奴もここにいるはずだ。」
小太郎が呟くように言った。

《零次朗殿。これを村長から預かって来ました。》
ドハンバは鏡を零次朗に渡した。

零次朗は鏡を受け取ると聞いた。
「この鏡は何だ。」

《真実を映す鏡です。霊魔が別の姿に化けても、この鏡の前では、真実の姿しか映りません。》
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