『霊魔伝』其の弐 火の章
「なんと、あのイシャナエイが。」

《零次朗、言ったであろう。注意をしろと。この世界では、目で見えるものが本物とか正しいとは限らない。
心を静かにして、感じるしかないのだ。
波動を感じて、自分自身で判断できるようになれ。いつまでも俺を頼るな。頼ってばかりだと、おまえは成長しない。》
小太郎はきっぱりと言い放った。

この状況に置かれた零次朗に甘えは命取りになりかねない。
それを零次朗もわかっている。

「わかっている。まだ油断をしてしまう心の弱さがあるようだ。目に見えるものをすぐに信じてしまうんだ。」

《それは零次朗の良いところでもある。見極めが難しいが、その見極めが修行の目的のひとつでもある。》

その時、一人の霊魔が駆け込んできた。

《村長、奴がいました。闘技場に仲間を集めて、態勢を整えているようです。何人かで見張っていますが、こちらに攻め込んでくるかもしれません。》

《そうか。バラダハン、おまえはこの村の守護に当たれ。ドハンバ、零次朗殿から離れるな。サトバ、ヤキシャ、それぞれ兵を募りバラダハンの指揮の元でこの村の守りを固めよ。その他のものは、話を聞いてくれ。》

村長は命令を出すと、村人たちを周りに集めた。
零次朗もその輪の中に加わった。

《良く聞いてくれ。再び皆の力を集めなくてはならなくなった。前の戦いでは、何とか勝利を収めることができたが、今回はどうなるかわからない。
しかも今回は、仲間を引き連れているらしい。
もしかすると、この中にも奴の仲間が潜んでいるかも知れない。隣人を疑うのは避けたいが、注意を怠ってはならぬ。
あのイシャナエイでさえ、奴の仲間だったのだから。》

村長は、零次朗の手を取り更に続けた。

《ここにあの佐緒里の息子、零次朗殿がおる。今はまだ、本来の力を発揮することはできないが、我々に戦う力を与えてくれるだろう。
零次朗殿、共に戦ってくださるか。》
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