『霊魔伝』其の弐 火の章
《さあ、行きましょう。ここはもう敵地です。敵に囲まれているのを忘れないように。では態勢を整えて進みましょう。》

村長に促されて、陣形を整えた。

三人抜けたので、九名となった一行は闘技場を目指した。
零次朗にも、少しの油断が命取りになりそうなくらい、緊迫した状況である事はわかった。

「小太郎。これからどうなるのだろう。俺はみんなの足手まといになるのかな。」
零次朗が不安な気持ちに襲われて、小太郎に言った。

小太郎は少し間をおいて答えた。
《零次朗。余計なことを考えるな。その心の弱さが相手の思う壺なのだ。何度も言うように、自分を信じろ。心を強く持つのだ。それが今一番必要なことなのだ。》

「もう迷わないよ。そんな状況ではないことはわかっているんだ。」

村長が立ち止まった。

一行に強い緊張感が走り抜けた。

カクギョウも何かを感じているようで、前方の一点を見つめている。

村長が、ゆっくりと小さな声で囁いた。
《敵が来ます。正面から。かなり強い波動を感じます。カクギョウさん、零次朗殿を頼みます。本気で行きますよ。》

「わかりました。零次朗さん、私のそばを離れないで。

『サムハラ・サムハラ、ゴウクウ・ダイソク・ミョウオウ・ソクタイ・ジツボウ・コウクウシン、サムハラ・サムハラ』

ここに、陰陽の境をもって、我が身を隠す事をせんと欲す。」

カクギョウは零次朗の前にでて、両手を組み合わせて呪文を唱えた。

すると二人の身体がぼやけて揺らめいた。
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