『霊魔伝』其の弐 火の章
《裏切ったのはどっちですか。零次朗、騙されているのです、あなたは。》

「何を言う。もう何人もの村人が被害にあっているんだ。」
零次朗は戸惑いながらも、答えた。

《皆さん、どうぞ闘技場へお入りください。危害を加えない事をお約束します。》

《イシャナエイよ。おまえの言うことが信じられるか。》
 ドハンバが一歩進み出た。

すると、イシャナエイが自分の持っていた剣を差し出した。
《これを零次朗に預けましょう。もし、罠だったら、それで私を切りなさい。》

差し出された剣を零次朗が受け取ろうとしたが、カクギョウが止めた。

「待ってください。私が受け取ります。これも罠かも知れません。」
カクギョウが進み出て剣を受け取って、零次朗に渡した。

イシャナエイはニコリと笑って、後ろを向きながら言った。
《後についてきてください。》

《シュレイ、アラハシャ、気を抜くな。零次朗殿、私から離れず付いてきてください。》

イシャナエイの後に続いて、一行は闘技場の中へ入った。

薄暗い通路を抜けると大きな部屋に辿り着いた。出場者たちの控え室らしい。
そこを抜けると、いきなり視野が開けた。零次朗が周囲を見回すと階段状の観客席に囲まれた広場だった。

ここが闘技場のようだった。


その真ん中に傷ついて村に戻ったはずの村長が立っていた。

《零次朗殿、ご無事でしたか。》

「村長さん、どういうことですか。」

零次朗は何がなんだか、わからなかった。

一行も戸惑っている。
< 53 / 57 >

この作品をシェア

pagetop