おしえてください、先生。

「ありがとうございます」



雄悟くんが笑顔でお礼を言う。

お母さんが持ってきたトレーには、紅茶が入ったカップ二つとクッキーが盛られたお皿がのっていた。



「苦手なものとか合ったらごめんねぇ。無理に食べなくて良いから」

「いえ。甘いもの、好きなので。嬉しいです。いただきます」

「よかったわ。ちょっと私、夜ご飯の準備があるからここにいられないけど二人で大丈夫かしら」

「はい」



雄悟くんが返事をすると、お母さんはじゃあよろしくね、と言って部屋を出て行ってしまう。

雄悟くんは紅茶を一口飲んで、口を開いた。



「ああいうの、よくあんの?」



その口調で、ああ本当にバスの人だ、と思った。

お母さんへの丁寧な口調は、まるで別人みたいだったから。



「ああいうの……?」



小さな声で答える。

男の人と話すの、やっぱり苦手……。声が小さくなってしまう。



「バスの。痴漢だったんじゃねーの」
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