おしえてください、先生。

「あ……い、いつもでは、ないです……。いつもは、混んでる時は乗らないようにしているので……」



混んでいても、次のバスに最初の方で乗れれば座ることができるから、そうやって対策している。

それでも全くないわけではないけど……。



「桜さんから男嫌いって聞いてるけど……あれが原因か?」



桜さんはお母さんのことだ。お母さん、言ってあったんだ……。



「あ、はい……」



それ以外にもあるけど、原因の一つではある。



「ふーん……。次から急がなくて良いから。俺、ちょっとくらい待ってても良いし」

「あ……、はい、ありがとうございます」

「あと俺、お前の男嫌い直してくれって頼まれてんだけどさ」



そう言った雄悟くんが、私に手を伸ばしてくる。

私は突然のことに、固まってしまった。

雄悟くんの手が、私の後れ毛に触れる。

触れた瞬間スイッチが入ったように勝手に身体が動き出し、後ずさった。

雄悟くんの手が届かないようになっても後ずさり続け、ついに壁に背がぶつかる。
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