先見の巫女


「私に話せるのはこれが全てだよ」


晴明様の話しはとてもじゃないくらい信じがたいモノだったはずなのに、何故か素直に受け止められた。


自分が朱雀の化身の使い手だからだろうか…


「でもその話しが本当なら雛菊は……」


あいつは死んじまうんじゃ…


「…そうだね…このままいけば、翡翠龍の巫女である雛菊は…命を落とす…」


酷く悲しそうな声だった。愛しくて大切だからこそ、失われてしまう事が恐ろしい…


晴明様はそんな顔をしていた。


「そんなの…何度も繰り返し続けるのかよ…」


雛菊も、雛菊の次も…
ずっとこんな生け贄みたいな事を続けていくのかよ…?

どれだけの人間がその度にどれだけ涙を流す?


あいつは…あいつは生け贄になる為に生まれてきたんじゃねぇだろ?





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