ゼロクエスト ~第2部 異なる者
彼は私の放った術を両腕で、いとも容易く振り払ったのだ。服には多数の切れ目が付いていたが、出血の様子は見られない。

「これで術士を名乗っているとはな。笑える冗談だ」

男は無表情な視線でこちらを一瞥したが、直ぐに剣を構えているアレックスの方へと向き直る。

私はその場で愕然としていた。

勿論男の他愛ない皮肉に傷ついたわけではないし、私自身が彼に対して怯えているわけでもない。

(術が……弱い!?)

私はいつもと同じように力を放出したつもりだ。だが今の攻撃力にはいつもの手応えがなく、殺傷能力が皆無なほどに弱かった。

男は私など見向きもせず、真っ直ぐにアレックスへと駆けていく。

「神撃水剣!」

アレックスは属性を剣へ付けると、迎え撃とうと身構えた。

私はその声で我に返り、続けて光弾を放った。

だが。

それは男に当たることもなく、勢いのないままでフラフラと地面へ落ちていくだけだった。やはりいつもの威力がない。
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