ゼロクエスト ~第2部 異なる者
「な…!? これは…」

先程までしていた通りの向こうの喧騒も聞こえなくなっている。

私はこのような体験をしたことがなかった。だが講義の時間、父から話に聞いたことはあった。

中位クラス以上が得意とする、結界術。

これを創り出すのには、多大な精神エネルギーと精霊力が必要とされるらしい。

ボブが自身に掛けていた術を解いたのは、恐らくこれのために違いない。ヒトへの変化にも同様にエネルギーを使うらしいのだ。

「強硬風拳(フォール・デュー・ヴィン)!」

ルティナは術文で両拳に風を纏わせた。

それを合図にレグが彼女へ向かっていく。

と、その周辺の壁が爆砕した。爆風と砕けた壁がこちらにも飛んでくる。

ルティナは壁に穴を空けながらそれを足場に、狭い壁を駆け上がっていった。レグとボブもそれを追いかけていく。

建物の上空で何かが交差しているのが見えた、と思った瞬間。

「!?」

戦っているその場所から、無数の黒い何かがこちらへ降ってきたのだ。それも物凄いスピードだった。
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