ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
「なあ、母さん……」


怜央に呼ばれて、真央は真っ直ぐに息子を見つめた。


怜央の手が、小刻みに震えていた。


「……俺、まだ、人間かな?」


瞳がゆらゆらと揺れていた。


消え入りそうなほど、不安げな表情。


真央は、怜央がこんな表情をしたのを初めて見た。


いつも毅然としていて、親にすら弱みを見せようとしない怜央。


あまりにも手がかからなすぎて、寂しく感じることもあった。


そんな怜央が、真央の前で初めて不安を口にしていた。


真央は自分より背が高くなった怜央の顔を見上げ、その整った顔を指先で撫でた。


「大丈夫、まだ人間よ」


怜央は、「そっか、良かった」と小さく呟いた。


「……ごめんなさい」


真央の口から零れるようにお詫びの言葉が出た。


怜央が顔を上げると、真央の瞳から大粒の涙が溢れていた。
< 103 / 370 >

この作品をシェア

pagetop