ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
「どうして謝るの?」


怜央の問いに、真央は答えられなかった。

真央は怜央の瞳から逃れるように、顔を背けた。


純粋な瞳が痛い。


まだ幼さ残る、思春期独特の大人でも子供でもない脆い心。


真央は、自分が下した決断が果たして良かったのか心が揺らいだ。


怜央のためを想うなら、自分たちは……。


数年がかりでようやく決心したことなのに、怜央の顔を見ると決心が揺らいだ。


どんなことになっても、自分は怜央の側にいるべきなんじゃないか。


そう思って口を開きかけた次の瞬間――


「俺、茜に会ってくるよ。

……色々、謝りたいこともあるし」


ニコっと笑った怜央に、真央はさっきまで言おうと思っていた言葉を失った。


「……そう。気を付けてね」


本当はこんなことを言いたいわけじゃない。


もっと伝えなくてはいけないこと大事なことが、たくさん残されていた。


けれど、どうしても真央は言えなかった。


怜央は微笑みだけを残して、去っていった。


後ろ姿が、やけに幼く見えて、真央は必死で涙を堪えた―――
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