。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。



夏だというのにあったかいコーヒーを受け取って、あたしは何となく聞いてみた。


「一結って……どうして名前呼んだの?」


「…あぁ、だってあんたをあだ名で呼ぶほど親しくないし、俺あんたの名字知らんし」


なんて響輔はまたもさらり。


あっそ!!


んで!残った選択肢が名前だったわけね!


バカみたい!名前呼ばれただけで、ドキッとするなんてーーー!!


あたしは恋する中学生かっつうの!


苛々としながらコーヒーをがぶりと飲む。


苦い味が口に広がり、喉を通る。その味に顔をしかめながら、




ドキッ……??


恋する中学生?





あたしは目をまばたいた。


―――まさか、このあたしが……??


隣で涼しい顔をしてコーヒーを飲む響輔をじっと眺めて、あたしは目を開いた。


相変わらず何を考えているのかまったく分からないその顔は、人形のように整っている。


ぼおっとしていうように見えて、時々視線が鋭くなる。


切れ長の瞳をすっと細めて、まるで射るように険しいものを浮かべて、



ドキン……



またもあたしの心臓が音を立てた。


出し抜けに響輔がこちらを振り返り、



「なぁ、これ薄い思わん?」



顔をしかめてコーヒーのカップを掲げるその様に、


あたしは額を押さえた。




< 589 / 592 >

この作品をシェア

pagetop