軽業師は新撰組隊士!



楓は、
まだ人を殺したことはない。

戦うときはいつも、気絶させるだけで済ませていたから。


「ぐっ…!っ、は…」


敵は虫の息で、このままにしておけば絶命する。

しかし、万が一。
生き残ったら、確実に恨みを晴らそうとするだろう。


その万が一を
根から無くしておけ、と
沖田はそう言っているのだ。


「…どうしても、ですか?」


楓がそう言うと、沖田はため息をつく。


「何を躊躇しているんですか。私達は、命の取り合いをしているんです。勝ちは生と等しく、負けは死と等しい。情けをかけて生きていける世界ではないのです。」


負けは、死。

その言葉が楓の頭の中をグルグルとまわる。


――怖い。


それが、楓の正直な気持ち。




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