軽業師は新撰組隊士!


鬼一は土方を見て、フーッと息を吐く。


「俺は確かに間者ですが…、ここの人達――あんたらの、生き方が嫌いなわけじゃない。」

「好きなわけでもねぇってか。」

「憧れなんだよ。」


視線を外して夜空の月を見る鬼一。


「明らかに無謀な生き方なんだ。誰もがあんたらみたく真っ直ぐ生きれるわけじゃない。」


自分の保身を省みらず、信念を貫くのは何時の時代でも難しいからな。と、鬼一は言った。


「俺はあんたらを裏切った。だが―――尊敬も信頼もしてるあんたらに、背を向けて逃げられるかよ。」

「……腹ぁつめなきゃなんねえぞ。」

「そうなったら、介錯はあんたに頼むさ。」


全部全部、吹っ切れたと、そう言って笑う鬼一に
それぞれの信念があって
それぞれの生き方があることを

理屈では理解していたそれを


悟った気がした。




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