Love Box:)
困った顔をしたたっちゃんがタンスの奥、そのまた奥の奥の奥。手を伸ばして取り出した。10年は早いけれど遠いのよ。
びりびり、びりびり。破く。
真ん中から綺麗に破く。混じることなく剥がれるように。赤に黒を、黒に赤を残していかないように。
「みち、る。なにやってるの」
綺麗に剥がれた。後ろを向くとたっちゃんが泣いていた。それは大人になった彼じゃなく、あの頃のたっちゃんだった。
『だって、やめなくちゃならないのよ。きっとたっちゃんにあたしはもう必要ないの。長く伸びすぎた毛先とか、溜め込みすぎた脂肪とか、そんなのと同じなんだから』
「俺にはわからないよ。みちるが何を言っているのか」
『わからないなんておかしいの。有っちゃいけないことなのよ。だって、たっちゃんとあたしは同じなんだから』
雨音は止んでいて、ヘッドフォンは未だに懲りずにそのセピアな音を漏らしつづける。
たっちゃんは顔を歪めずに泣いたまま、あたしとぼろぼろになったランドセルを見ていた。