Love Box:)
ガブリ。ガブリ。
口を、舌を、頬を、喉を。はたまた腕、腹、太もも…―――
食べるなんて生易しいものじゃない。彼は無心に噛みついていた。
『痛い、よ』
痛い、痛い、痛い。さっきぶつかったせいだろうか、口の中も切れて鉄の味が広がった。苦い。
『なんで噛むの?』
「痛い?」
『痛いよ』
「だって、みちるがどこかにいってしまいそうだから」
さっきやめようか、なんて言った癖に矛盾しているのね。だけどそう言われてドキドキしてるあたし。
あたしだって、たっちゃんがどこかへ言ってしまいそうで恐いの。
「優しいキスをしてよ」
左胸の心――心臓につかえていた塊は喉をいったり来たりして圧迫して、あたしの呼吸を邪魔していた。
彼の言葉、体温、唾液だけがそれを溶かしていくの。
それを同時に一遍にちょうだいよ。
初めてキスをしたのは、出逢ったその日だった。
虐められて泣いていたたっちゃんのおでこにチュウをしたら、泣き止んだたっちゃんがあたしの唇にした。
毎日キスをして、中学の中頃からはその先だって頻繁に。
それでも愛の言葉だけは言わなかった。言わせもしなかった。たっちゃんが言おうとしたものなら、あたしがその口をすぐに塞いだ。