高校四年生(ラジオドラマ化決定!)



当時、遷崎徹は実の母親を恨んでいた。自分を捨てたことはいい、それよりも子育て出来ないくせに美玲を、新しい命を安易に作ったのが許せなかった。


美玲も結局捨てられたのではないか。手紙には妹の存在と桐生財閥の養子になったとしか記されていない。


ジャーナリストとして仕事をこなしていた遷崎は、何度も嘘であってくれと神に願った。


何故、桐生財閥に関わってしまったんだ。

何故、母親は一時の感情で責任を持てないのに子供を作って同じ過ちを犯したんだ。


母親が二人いて、父親が三人、兄が一人、そんな無茶苦茶な真実を知ったら誰でも普通じゃいられなくなる――。


遷崎は幾度の取材で桐生財閥の闇に迫っていたが、完璧な真相までは追求しきれていない。


ただ桐生財閥に対し、外敵として関わったものの末路は己の瞳が映していた。


脳裏を駆け巡った最悪なる事態――桐生善三が罪を犯し、美玲の真実が公にされたら将来は絶望的。


遷崎は6年もの歳月を費やし、徹底的に桐生財閥を調べた。


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