高校四年生(ラジオドラマ化決定!)



「急いては事を仕損じるとはよく言ったもので、美玲が虐待を受けている情報はまだ流すべきではなかった。簡単にもみ消されたし、少しの間は美玲や桐生善三との接触が遠退いた」


「でも結果的に逃がしたんすよね」


「危険な賭けだった。なんとか逃がしたけど、その後は携帯でやり取りするぐらいだった」


遷崎が、美玲を桐生家の屋敷から逃がした時の手紙には『家を出たあと一度会おう』と記してあった。


再び会った際に遷崎は2つある携帯の一つと生活の為にとクレジットカードを手渡す。


「彼女には自分が兄だって伝えたんですか?」


「ああ、親の事も手紙に記した。話しておいた方がスムーズに事が運ぶからな、真実を知ったら美玲はコクリと頷いただけで涙は見せなかった。確信した、美玲なら大丈夫だって」


「……それって遷崎さんを心配させないために心を押し殺したんじゃないっすか」


自分でも不思議だが、遷崎と話すと尊敬と怒りが入り混じった感情が浮き出てくる。


桐生美玲を虐待や犯罪を犯す仮親から逃がしたのは聞こえはいいかもしれないが、逃がした後の対応が無責任のような気がしてならなかった。


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