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「……でね、俺は今度こそ、自己ベスト出したいんだよね」

昨日と同じ声で、楽しそうに話をする屋良くん。



「……あのさ……」

「なに?どうしたの?」

そういえば、はじめてあたしから話題を出したことに驚いたのか。

返事をした屋良くんの声はいつもより更に大きかった。



「陸上部に、綺麗な顔した男の子、いない?たぶん屋良くんの、友達」

「……綺麗な顔?陸上部の奴はみんな友達だし。誰だろ?」

あたしの問いかけに、真剣に考え出した屋良くん。

本当に、わりと何にでも無関心で、物にも人にも、深入りしようとしないあたしとは正反対だ。



「……今日ね、トラックをね、走ってたんだけど……」

あたしの言葉に、何か気付いたらしい。



「トラック走ってたなら、長距離の人だな。同級生は、シュンとテツの2人だけなんだけど…」



「……シュンとテツ?」



「2人とも、男の俺からしても、かっこいい顔だよ。背は?低かったらシュンの方かな」



「……シュン?」



 サキシマ シュン
「崎島 瞬。主に1500mを専門としてる。あんな顔して、県の記録とか持ってたりする」



そうなんだ、と軽く返す。

屋良くんには、それがどうかした?と聞かれた。



だけどなんとなく。

ただなんとなくなんだけど。

今朝、急に話しかけられたことも、

トラックで走る彼の姿に涙が出たことも、


あたしの胸だけに留めておきたかった。



だから、「なんでもないよ」なんてごまかして、ふふっ、と笑う。



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