どうしょうもねぇくれぇ、好き。





長原は今までこの事を誰にも言えずに過ごしてきたのだろうか。




だとしたら悲しいな。




「…でも、それ読んだ日からちゃんと部屋の掃除をして、食生活もちゃんとした。


女遊びも、酒も、煙草も止めた。


それと、鈴奈が俺と一緒に見たがってたラブストーリーを借りに行って一人で見たんだよ。


そしたらその映画、俺等の関係と全く同じの話で。最後は引っ付いて終わる話なんだけど。


…それ一人で見てて胸が痛かった。早く二人で見とけば良かったな、って思ったよ。」




少しだけ穏やかに笑った長原は目を閉じて上を向く。




「でも、お陰で今まで行けねぇでいた鈴奈の墓参りにも鈴奈の命日に行けた。


そこで鈴奈の両親とも逢ってさ。俺の事知らねぇだろうなと思ったけど一応、頭下げたんだよ。


そしたら、何故か鈴奈の両親が俺の事知っててさ。疑問に思って聞いてみたら、鈴奈が両親に話してたんだと。


金髪の髪の毛をした男が居るんだけど、私はその人と結婚したいなぁとか思ってるんだよね、って。


それ聞いて鈴奈の両親の前なのに泣いちまってさ。


あの子に今まで幸せを与えてくれてありがとう。って鈴奈の両親が頭下げてきて……幸せなんてあげれてねぇのに。」




長原の閉じた目から涙が流れる。




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