スパイ・ハイスクール

:と、いうことでやって来ました





私の目線の席には、レンズに反射した自分の姿が映っている。周りの豪華な風景になじめていなくて、われながら笑った。

見たところ、レンズーーーもとい防犯カメラは校門前に2つ。警備員らしき、がたいのいい男は右と左に1人ずつ。

ピカピカと光る黒タイルには豪勢な字で、

「星凛女子高等学校」

と彫られている。
その黒タイルをぼー、っと見ていると、こちらに走って来る人影が見えた。


「神谷様ーっ!」

「え、」

「神谷様ぁーっ!」

「え、ちょ、」

「神谷様ぁぁーっ!」

「ちょ、貴方誰か知らないけどとりあえず黙ってくださいぃいいぃぃい!!」

私は必死に人差し指を口にあて、黙って欲しいことを伝えようとした。

「奏から連絡きてないんですか?この学園で私は、転校生として転入してくるってことになってんですよ!」

「あ、ああああ!そうでした。私としたことがついうっかり......。すみません、寺西ゆず様」

ぽかん、とした様子だった目の前のその人は慌てて謝った。
   
寺西ゆずとは、神谷家のお隣さんの名字(勝手に使用)と真希が好きな柚子を掛け合わせて出来た私の偽名だ。

つまり、超適当。

< 143 / 165 >

この作品をシェア

pagetop