龍とわたしと裏庭で【おまけの圭吾編】
やっと午後四時になって、僕は車のキーをつかんだ。

「まだ早いんじゃなくって?」

彩名がそう言ったが、もう我慢の限界だ。

「あっちで待つからいい」

「わたしが行きましょうか? たぶん女性だらけよ」

「そんなの平気だよ」


普段の精神状態なら、彩名の忠告を聞き入れただろう。


自分の母と同年代か、それより少し年下の女性達にまじって立っているのは確かに居心地が悪い。

しかも全員、僕をほおっておいてくれればいいのに、ご丁寧に挨拶にやって来る。


あちらこちらでいくつかの小さなグループにかたまり、ざわめく 声 声 声

子供の話

噂話

大げさな笑い声


僕の苦行はどこまで続く?


永遠に終わらないいんじゃないかと思っていると


「あら! 来たわよ」

誰かが指さし、大型バスが五台、道路を曲がって入って来るのが見えた。
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