竜を狩る者
「横取りなんて…しない」

そう言ってサンは、ローブの袖の内側に隠れた己の左腕を見せた。

…肘から先がない。

「二親を盗賊にやられた時に…腕…失くした…耳も…聞こえない…こんな体で…討伐なんて出来ない…」

別段同情なんぞしないがな。

心の中でそう呟いた後。

「なら何の用だ。パーティーなんぞ組む気はないし、同行した所で報酬も手柄も分けてはやらんぞ」

冷たくあしらうローゼン。

「報酬なんて…いるか…!」

たどたどしい言葉で、しかし強い語気でサンは言った。

「俺は…ニーズヘッグと…話し合いに…行きたい…」

「何…?」

サンはローゼンが耳を疑うような事を口にした。

「竜種と…人間の諍いを…なくしたい…共存交渉をしたい…」

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