竜を狩る者
「何よそのインチキ能力!竜種だからってそれはちょっと卑怯なんじゃないっ?」

不平不満を訴えるフューリーだが、言った所でどうにもならない。

「一発で…」

ラムダが革袋の中から一本の矢を取り出す。

「一発でズメイの息の根を止めるしかありませんね。再生力の源…心臓でも貫くしかない」

それはまだラムダが剣士として狩りをしていた頃、リントヴルムを仕留めて得た尾の尖端を取り付けた矢だった。

他の矢に比べて巨大な鏃がついており、貫通力、殺傷力共に絶大。

竜種の鱗すら容易く貫き、心臓に達する事も可能だろう。

ただ。

「ズメイにはまだ二本の首が残っている。モタモタしていると中央の首も再生するかもしれない。素早く確実に、心臓を射抜かないと…」

「OK、じゃあ私がズメイを牽制してやるよ」

シールドを構えるフューリー。

「しかし…」

ラムダには躊躇が窺える。

「僕の腕でズメイを確実に仕留められるかどうか…あのズメイですよ?それを心臓を一撃のもとになんて…自分で言っておいて何ですが、確率的に考えてもそんな難易度の高い事が…」

「あーーーーーーっ!うるっさい!」

ウダウダと苦悩するラムダを、フューリーは一喝した!

「失敗したら一旦撤退して次の機会を狙えばいいじゃないか!しくじる事にビビッてんじゃないよ!ミスったらまた次の討伐も私が付き合ってやるよ!生きてる限り私達の負けじゃない!」

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