誠ノ桜 -桜の下で-



池田屋の一件にて、新選組は大きく名を轟か
せる事になる。

だが、その代償は小さくはなかった。



――…


池田屋事件の翌日。

未だに、凜は目を覚まさないでいた。

沖田は手当てを受け、一晩中凜の傍にいた。


両腕には深い傷が三つと多数の擦り傷、両足
は深い傷が四つと多数の擦り傷、肩には深い
傷が一つ。

幸いにも、胴の部分には擦り傷だけ。


凜の傷は凄まじいものだった。

その状態なら普通、立っているのもやっとだ。


沖田は凜の額の手拭いを水に浸けた。

傷によって熱が出ている。


「………ぅ…」


時折、凜は苦しげに声を漏らす。

沖田がそっと髪を撫でると、凜の瞼がゆっく
りと持ち上げられた。


「……そ……ぅ、じ…?」

「凜ちゃん…よかった」


熱で潤んだ瞳を向け、小さな声で紡ぐ。


「み、ず…」


沖田は直ぐに水を持って来た。



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